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特集

箱をかぶれば箱男 (2ページ目)

(2011年6月19日)

こちらからの続きです。

北口へ戻り、地下道へ

再び駅の北口に戻ろう。今度は駅構内を通らずに、ちょっとした飲み屋街を通って行くことに。ここは、なんだか、しっくりくる。

静岡駅南口・北口の間の飲み屋街
色味も合う

北口の広場からエスカレーターを降りて地下道へと向かう。箱男になって行動するときの難しさは、やはり視界が限られているところ。エスカレーターに乗るとき足元のステップが見えないので、けっこう不安だ。ぐぐっと体を傾けてタイミングを計る。はじめてエスカレーターに乗るような気分。

その上、箱男はエスカレーターの幅をほぼふさいでしまった。これが一人乗りのエスカレーターだと乗ることすら厳しいし、ラッシュ時の東京の駅だったら後ろから押されて転げ落ちてしまっただろう。

静岡駅北口エスカレーター
静岡駅北口エスカレーター
降りるときも緊張する

エスカレーターを降りると、青くライトアップされたムーディーな滝が。変な動きをしてウォーミングアップ。

静岡駅北口エスカレーター
自殺防止灯にも使われるように
青い光には理性を取り戻す働きがあるという

時刻は夕方。駅へと向かう人の流れに逆らって、地下道を歩く。

箱男になって街に出ることを考えたとき、まず浮かんだのは(からまれるんじゃないか)ということだった。しかしはっきりした反応をする人は多くない。振り返って見る人がいるかって? …箱男は後ろが見えないのだ。そして真横も見えない。前しか見えない。

静岡駅北口地下道
お疲れ様です (クリックで拡大)

文章が浮かれポンチなのは、このとき実はそれほど恥ずかしくなかったからである。比喩的な意味だけでなく実際に周りが見えていないので、道の真ん中を変な動きでどんどん進んでいってしまった。撮ってもらった写真を見返すと、意外と見られている。

反応があった中でも、一人で歩いている人は困った様子。二人以上で歩いている人は同行者とひそひそ。

静岡駅北口地下道
笑われてる…?  (クリックで拡大)

…撮影してくれた人はずいぶん恥ずかしかったという。どんな様子だったかは最後のまとめ動画をご覧いただきたい。

静岡駅北口地下道
この方はお一人ですが、すてきな反応

地下道から階段を上がり、おしゃれな人の集まるパルコの前にやってきた。キラキラまぶしいウインドウには激モテ必至の流行水着、ビニールめくって見上げるおいらは長靴履いた段ボール。

PARCO前
なるほど
PARCO前
アウェイです

そして、ついに話しかける人が現れる。

何してんの?

パルコの前でうろうろしていると、初老にさしかかろうという男性が近づいていらした。写真は道の向かい側から撮ってもらっていて、外も見ていないので、このときはまだ気づいていない。

PARCO前
写真中央の方
PARCO前
ついに箱男の正面に

箱の側面をポン、ポン、と叩かれる。覗き窓を開くと男性の顔が間近に。普段だと初対面の人にこれほど顔を近づけることはないはずだが、箱があることでかえって近くなっている気がする。

「何してんの?」 …よかった。怒られているわけじゃなさそうだ。「『箱男』って小説がありまして、そのマネで段ボールに入ってみようかと…」

文字に起こしてしまうと伝わらないのだが、とっさに関西弁になってしまった(三重県育ちです)。身構える間もなかった分だけ無防備で、付け焼き刃の標準語が出なかったのかもしれない。

「ふーん、何かの宣伝?」「いえ、特にそういうわけじゃないんです」

「そう、がんばってね」「ありがとうございます」

もう少し会話はあったような気がするのだが、大体こんな感じだった。男性はもう一度側面をポン、ポン、と叩いて、去って行かれた。

PARCO前
がんばります (クリックで拡大)

パルコの前にはもう少しいて、うろうろしたりもしてみたのだが、結局このあと話しかけられることはなかった。

ちなみに言い訳のように書いておくが、普段は吉野家で「お勘定お願いします」というのにもちょっと身構えるくらい気が小さい。こうしてうろうろできるのも、周りが見えない箱男の作用というべきか。

下の写真、制服の女子学生に顔を向けてみたが、ずっと道の側を見ていた。(いったい箱男のどこまでが顔なんだろう。)

PARCO前
うしろのおしゃれな二人に注目 (クリックで拡大)

さて、あたりもだんだん暗くなってきた。もう少し箱男で街を歩き、最後にスクランブル交差点に向かうことにしよう。次のページへどうぞ。

 

 

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作成:とね(info アットマーク yuzamashi.net)