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特集

箱をかぶれば箱男

(2011年6月19日)

――「魔がさした。」

言い訳になっているようでなっていない文句だが、使うときがきた。

魔がさした

小説のマネをします

安部公房に『箱男』という小説がある。始終ぼんやりして筋もまともに追えない者に紹介や感想などおこがましくて言えないが、分かるとか分からないとか、泣き笑いとかお役立ちとか、そういうことではないのだろう。

首筋がこわばってくるような、早く外の空気を吸いたいような感覚、しかしそれもまあいったん置いて、ここは浮かれて上っ面を撫でてみる。

『箱男』
これは新潮文庫版ですが初刊は1973年

そう、何せ「箱男」だ。登場する男が大きな段ボール箱を頭からすっぽりと被って行動するのだ。ざわざわするではないか。

捨てるのをサボっているから大きな段ボールはうちにあるし、なんだか分からないが男ということになっている。箱も男もクリア。

Web上の「箱男」体験報告

インターネット上では「箱男」を実践したレポートや写真がぽつりぽつりと見つかった。そんな先達の姿を横目に見ながら、狭い部屋で箱を組み立てて覗き穴を開ける。穴の部分には「誰からも覗かれずにすむ」ための目隠し用ビニール。ビニールにの中央は開閉のためのスリット。小説にはきちんと寸法まで書いてあるのだ。

浮かれている
浮かれています
箱男の「材料」
レシピ本のような書き方。腰に巻きつけるドンゴロス
(麻袋)を用意できなかったのが悔しい

街に繰り出そう

部屋を占拠していた箱を持ち出し、静岡駅横の立体駐車場にやってきた。やはり不安なものは不安だが、夕暮れも迫っている。街に繰り出すことにした。(最初はおびえていて地味な写真が多いですが、徐々に街中に向かいます。)

箱に入る前
長靴に履き替える
カラ元気
カラ元気
箱運搬中
箱が結構デカい

箱に入る。そういえば、長靴のスポスポする感覚は久しぶりだ(箱男は長靴を履いているという設定なのです)。そして、ボール紙特有の甘ったるい匂い。

ガード下
まずは人通りの少ないところで練習

動けることは動ける。しかし箱を支えながら、視界を確保するためにビニールも少し開けたまま歩かなければならないので、早くも腕が疲れそうだ。ちなみに、上の写真の女学生は無反応だった。

駅のほうへ
そして徐々に人通りのある駅のほうへ向かう

事前に読んだ先人のレポートでは、警察官に止められたという話もあった(不審者がいる、という通報を受けてのことらしい)。鉄道警察の前で写真を撮ってみたが、特に咎められることはなかった。

鉄道警察隊前
ポストのようにも見える (写真をクリックすると拡大します)

駅にやってきた

長く続いていた工事もほぼ終わり、静岡駅前は白っぽく、ピカピカになった。こちら北口側が繁華街に面していて、どちらかというと栄えている。整然と並んでバスを待つ人たち。そろりと近づき後ろについた。

バス待ちの列に並ぶ
バス待ちの最後尾に並んでみる (クリックで拡大)

あっけないほど普通に並んでしまったが、後ろに人が続くと申し訳ない(箱男のままではバスにも乗れないだろうし)。箱男のせいで後ろに人が並ばなくなり、しずてつバスの売り上げが減ったとなれば恐ろしいことだ。

というわけで列を離れ、駅の構内へと移動することに。警察官が監視していたが、ここでも何か言われることはない。そこそこ人通りがあるぶん、歩くのにはちょっと気を遣う。

静岡駅構内
構内が広くてよかった

今回着いて来てくれた人には、撮影がてら危なくなったら誘導をしてくれるようお願いしていたのだが、勝手に方々歩いて振り回すかたちになってしまった。

静岡駅南口

構内を通り抜けて一旦南口に出る。やはり浮かれていたのだろう、マクドナルド前の待ち合わせスポットで、人々の間に混じってみる。開口部が前と下しかないので、後ろのほうで男性が何か言っているのだが、よくわからない。

静岡駅南口
パイプに寄りかかるのはちょっと難しい (クリックで拡大)

静岡駅の駅舎には南口側に不思議な凹みがある。箱男、しばし休憩。この凹みが妙にしっくりくるのだ。居場所をみつけた感じである。

静岡駅南口
寝床にするならここだろうか
静岡駅南口
お、見られてる

この凹みには照明もばっちり点いているので箱男の注目度も高い。しゃがみこんでいるときに女性が見て行ったようだ。…なんて自意識過剰なことを思ったが、単にカメラのレンズの向く先を見ているだけのような気がする。

静岡駅南口
なまめかしい銅像に擦り寄ってみる
静岡駅南口
いちおう座れます

…箱男は横から見ると結構厚い。

というわけで再度北口に戻り、地下道から繁華街へ向かいます。ついに、話しかけてくる人も…。次ページへどうぞ。

 

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作成:とね(info アットマーク yuzamashi.net)