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トランシーバー (2011年5月2日)

iPhoneでイヤフォンを使って電話している人をたまに見かける。音楽を聴いている途中で電話がかかってきたからなのか、画面を見ながら電話したいからなのか、iPhoneを持っていないのでわからないのだが、その格好が何となくおもしろい。

イヤフォンマイクではないので、自分の声は本体のマイクに向かって話す。相手の声はイヤフォンから聞こえているのだろう。すると、手に持った本体がトランシーバーや無線機のように見えてしまう。イメージとしては「これから○○へ向かう、どうぞ」ザザッ、「了解、どうぞ」ザザッ、という感じだ。

トランシーバーは子供の頃の憧れだった。たしかそんなおもちゃを持っている子がいて、うらやましかったように覚えている。高校には本物があったので嬉々として遊んだ。

iPhoneを持っていない者の戯言でした。

リフォーム詐欺 (2011年5月5日)

高校生の頃、日雇い派遣の会社に登録して初めての仕事をした。仕事は倉庫での作業で、アルバイトも何も全く初めてだったので、緊張して派遣先に向かった。緑のゴム引きの手袋を買い、四日市で近鉄内部線という小さい電車に乗り換える(今調べると軽便鉄道由来らしい)。ロングシートの両側に人が座ると、通路を一人歩くのがやっとという狭さだ。

駅でもう一人同じ派遣会社のスタッフの人と落ち合い、倉庫に向かう。今思うと普通だったのかもしれないが、仕事は本当につらくて泣きそうになった。段ボールの荷物をひたすらトラックに積む。体力の無さが情けなくなる。色々な会社から来た人が現場で集まって働くのだが、まあドヤされ通しである。

何とか一日の仕事を終え、同じ会社の人と駅に戻った。ペーペーの情けない様子を見かねたのか、その人が色々と心構えを話してくれる。電車の時間まで少しあったので駅のベンチで話を聞いていたのだが、彼がリフォーム詐欺の体験(詐欺するほう)を話し始めた。二十代前半くらいの人で、それほどコワそうな感じでもなかったが、随分と悪いことをしたようだ。

その手口というのが、数人で隊を組んで各民家を回る、というもので、無料の家屋点検という名目で上がり込むのだそうだ。一人が屋根裏だか床下だかに入り、デジタルカメラで写真を撮るふりをする。そして「こんなにシロアリが食っていますよ」と、写真を見せてリフォームを迫るのだ。もちろん写真は仕込んであるニセモノで、カメラを再生モードにして見せれば信じ込む人も多いという。

「あの辺の家は大抵おれたちが荒らしつくした」と自慢げに話すのを、世間知らずの僕はただ聞いていた。聞けば19歳で年収は1,000万あったそうだ。認知症のお年寄りの家などは繰り返し訪問し、「いらんような所に何個も換気扇がついとる」らしい。恐ろしい話だ。その後彼はトラブルか何かでそこを辞め、つなぎに派遣で働いている、とのことだった。

電車が来て、四日市で別れた。リフォーム詐欺の話は確かに衝撃だったが、汗びっしょりで疲れてボーッとしていたから、義憤を感じるというようなこともなかったように思う。翌日くらいには通報しようかと考えもしたが、名前も知らないのだった。

その会社で日雇い派遣の仕事をしたのは結局その一回きりで、もう行かなくなってしまった。少しして別のアルバイトを探した。確か給料(7,000円くらい)も取りに行かず、そのままになった(会社に出向いて現金でもらう仕組み)。

大学に入ったばかりのときというのは知らない同士の探りあいで気まずいものだが、話がつながらなくなったときに、なぜかこの話をしてしまったことがある。今考えれば当たり障りのない話をすればいいものを、いかにもダメである。茶髪のおしゃれな女の子が「私の友達の友達がリフォーム詐欺師だって自慢しよ」と言っていた。「友達じゃないよ」と言って何とか笑いで場が収まったが、よく反応してくれたものだ。

社会の厳しさを知ったというでもなく、今でも折り合いはつかない。本当なのかどうかもわからない。確か今頃の季節だったと思う。

オレジュー (2011年5月7日)

食パンと一緒に何を飲むか、というのはなかなかの問題だ。結局牛乳やコーヒー牛乳あたりがふつうでおいしいと思うが、100%のオレンジジュースという選択肢はどうだろう。いや、けっしておいしくないし、なにより酸っぱい。まあ、まずくも…、ない。「どうだろう」と書いておいてなんだが、自分で買ってやることはない。

この組み合わせだと、両耳の下あたりがキュウッと奇妙な感覚になりませんか、というのが、言いたいことだ。ビジネスホテルの朝食などで、これをやってしまうことが多いように思う。温かいトーストにマーガリンをつけて食べる。オレンジジュースを飲む。冷たいオレンジジュースでせっかくのマーガリンが口の中で固化してしまう。ああ、やっぱりあんまりおいしくない。キュウッとなる。

そもそも100%のオレンジジュース(濃縮還元のやつ)は何だか濃い。喉もいがらっぽくなる。中学生くらいの頃、解決法を見出した。オレンジジュースを水で薄めて砂糖を溶かして飲むのだ。オレンジジュースの量はかなり少なくていい。「バヤリース」や「なっちゃん」のような味になる。たくさん飲める。清涼飲料水を買えないかわいそうな子供のような感じだが、まあそうかもしれない。砂糖の量が少なすぎるときの、薄いだけのオレンジジュースの味は確かに悲しい。

瓶の「バヤリース・オレンジ」には、なんだか独特のイメージがあるような気がする。法事だとかそういう大人の集まりの横で、子供に与えるようなイメージ。大人が瓶ビールを飲むようなところだから、選択肢がそれくらいしかないのだろう。手持ち無沙汰で、瓶に印刷された塗料のほんの少し盛り上がったところを撫でたりして、黙っている。

パンの話だと、やっぱりコーンポタージュが浮かぶ。何せお金持ちの象徴である。「コーンポタージュ」という響きの、圧倒的な存在感が光る。お金持ちの家ではきっと、裏が銀の紙パックから鍋にコーンポタージュを移して、暖めて、白くて薄いカップに入れて、朝、出しているに違いない。子供がトーストを浸して食べて口の周りがべたべたになって、エプロンつけた母親がぬぐったりするんだろう。そんなひがみみたいな勝手なイメージだ。想像して勝手にイライラしている。粉をお湯で溶くやつではだめである。

だからかどうか、ビジネスホテルの朝食では、トーストの横にオレンジジュースとコーンポタージュを並べてしまったりする。注ぎ方が下手でコーンポタージュはカップの縁から垂れる。テラテラしたクロスに黄色い輪ができる。

にぎり棒 (2011年5月24日)

電車の中に、非常ドアコックの開け方などとあわせて、「電車は急停車することがありますのでご注意ください」というプレートが付いている。サイズもわりと小さいので、なんだかよくわからない存在である。「ああそうか注意しなきゃな」と思うことは特にない。

が、もしかしたらこの車内に、生まれて初めて電車に乗った人がいるかもしれない。「そうか電車は急停車する可能性があるのだな」と思っているかもしれないのだ。ちなみに漢字で書いてあるから対象は一定年齢以上だろう。(それとも、「急停車して危険じゃないか」と裁判を起こされたことでもあるのだろうか。)

JRでは「電車は事故防止のため、急停車することがあります。お立ちのお客様はお近くのつり革・手すりにおつかまりください」という自動アナウンスもある。このアナウンスはわかるのだが、その後に英語も流れるのだ。“It may be neccesary for the train to stop suddenly, to prevent an accident. So, plase be careful.” きちんと聞き取れているかどうかわからないが、まあこんな内容である。なぜだかわからないが、これを聞くとちょっとモゾモゾする。丁寧すぎるからだろうか。

三重交通のバスに子供のころよく乗ったが、その車内では「お立ちのお客様は、つり革・にぎり棒をご利用ください」というアナウンスだった。いま考えると「にぎり棒」には何となく淫靡な響きがあるが、それはさておき、他のバスに乗って「つり革・手すりにおつかまりください」というのを聞いて(あ、「にぎり棒」じゃないんだ)と思った記憶がある。

それ以来、「にぎり棒」を聞くことはずっとなかったのだが、先日川崎市営バスに乗った際に「にぎり棒」と言っているのを聞いて、久しぶりにこのことを思い出した。(おお、ここにも「にぎり棒」が!)と、ハッとしたのだ。

東京ではラッシュ時以外のバスでも立ち客が多いので驚く。運転士さんもしきりにマイクでつかまるよう促している。そして、20代から50代くらいの人たちもよくバスに乗っている。東京ならではだなあ、と思う。

…それにしてもneccesaryの綴りは難しい。cが二つだったか、sが二つだったか、両方とも二つだったか、中学のときからいいかげんなので、きちんと覚えていない。英語の先生がMississippiを紹介したときはなかなかの衝撃だったが、こんなページを見つけると、英語圏の人でも難しいと感じていることがわかって少しほっとする(ファイル名もhard_spelling.htmlだ)。CincinnatiMassachusettsなど、覚え方の小歌のようなものまである。ヨエロ寸(尋)みたいなものかなあ、と、勝手に思う。

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作成:とね(info アットマーク yuzamashi.net)